ところで、団地には高齢者が多いと書いたが、
若い世代の人もそれなりに住んでいる。
それも、何故かぼくと似たような職種のクリエーター系が多い。
まずもって、M山家の旦那さんはグラフィックデザイナー。
そのほかにも少なくともあと三名のグラフィックデザイナーが住んでいて、
そのうちの一人はぼくの大学時代の後輩でもある。
あとは知っているだけでも某雑誌編集長、某雑誌編集者、
スタイリストが二名ほど。これは又聞きだが、
ヘア・メークとカメラマンも住んでいるらしい。
メークさんは今チャットレディというアルバイトが気になっているらしい。
チャットレディの口コミは良いらしいが。
それと、もう引っ越したが、
以前コンテンポラリーダンスの舞踏家の方が住んでいて、
この人にいたってはかつて父のお弟子さんで、ぼくの子供のころを良く知っていた。
十年まえ、ぼくがここに引っ越してきたのはまったくの偶然で、
ほとんど暇つぶしで入った恵比寿の不動産屋で
たまたま見つけた物件だった。
ここはいわゆる公団だが、家主が又貸ししている場合が多い。
家賃も家主によってちょっとづつ違うし、
内装をガラリと変えているところもある。
渋谷駅に抜ける道に沿った高台にあり、
敷地内は緑も多いので環境は抜群に良い。
ぼくの周りでもここの存在はけっこう知られていた。
そういえば、春先に写真家の長島有里枝ちゃんと電話で話していたときに
「もし都内に引っ越したら、そこに住みたいから不動産屋を紹介してほしい」
と言っていた。
以前、ぼくの取材で自宅に訪れたある女性ライターは
この団地をひじょうに気に入って「どうしても住みたい」
とその後何度も空き状況確認の電話が入り、
不動産屋にも粘りに粘って
やっと空いたウチのとなりの部屋に引っ越してきたことがあった。
ところがこの人はなんと三日も経たないうちに
また別の場所に引っ越してしまった。
なんでも「塗り立てのペンキの匂いが耐えられなかった」そうだ。
もともと最初に会ったときから、
なんか神経質っぽそうな人だなぁとはおもっていたのだが。
そんな、かつて某新聞小説の舞台にもなったこの団地は、
ちょうど一年後に取り壊すことが今年の夏に最終決定された。